2/23  隅田公園  桜橋  ヤマザキ報告 (三枚起請・写真)



       不肖、ヤマザキ撮って参りました


 
浅草から徒歩10分ほどの距離に、隅田川に架かる唯一の歩行者専用橋「桜橋」がある。
 この橋は形状においても橋上の雰囲気においても特徴があるので、何回か取材を試みたが、どうしても「写真」にならなくて、今まで掲載を見送らざるを得なかった。

 冒頭の写真は桜橋上であるが、これだけでは変哲もない、どこかの公園にしか見えない。桜橋は
X字形の、特殊だが美しい橋梁を持った構造なのであるが、橋の横からのアングルでは、ただの普通の橋にしか見えないし[A]、さればと橋のたもとから対岸に向けてシャッターを切ると、何が何だかわからない写真[B]になってしまう。


[A] 

  [B] 


 
今回も諦めかけたとき、桜橋のすぐそばにある「台東リバーサイド スポーツセンター」が目に入った[C]

「あそこから俯瞰で撮影できぬものか……」


[C]


 
旧・台東体育館、現・台東リバーサイド スポーツセンターの入口は隅田川側には無く、反対側のバス通りに面している。
 ガラスのドアを開け、スポーツセンターの中に入ると
やにわに警備員に睨みつけられた。まあ、ガンづけされたくらいで逆上するもどうかと思われたので、相手にせず、館内の隅田川側に行く通路を探す。しかしそのようなものは存在せず、大きなガラス窓で仕切っているトレーニングジム内に入らないと、反対側に抜けるのは不可能な間取りになっていた。

 仕方がないので入口近くに戻り、先ほどの警備員の方をチラッとみると、奴はいよいよ物凄い目つきで、こちらを見つめている
[D]


[D]

.....
             
 ここでちょっと話は脱線するのだが、どういうわけか、おれはこの種のガードマンと相性が悪い。いや正確に言えば、やつらが一方的におれを敵視するのだ。よっぽどアヤシク見えるのか。

 〇某西洋美術館では、屋外(館外)に展示してある銅像を撮影していたら、ガードマンが近づいてきて、
「デジタル・カメラでの撮影は禁止です。フィルムのカメラなら許可します」
とのたまった。意味判らん。おれ以外にも多くの人が銅像をバックにデジタルカメラで、スナップ撮影を楽しんでるのに。
だいいいち、ネガフィルムを現像したものをスキャナーで取り込むのを、一生その撮影者にまとわりついて阻止するのか(ちなみに、ここの美術館内自体が写真撮影可なのである。もちろんデジカメでも)。 クレイジーである。

 〇某貨幣博物館
では入口で「撮影可」の確認をし、展示物の硬貨を撮影していたら、入口のガードマンとは別の年配の男がやってきて
「写真は撮らないっ」
などと押しつけがましい口調で、寝言のような事を口走った。
「えっ。下の入口で、撮影は問題ないと確認して来たんだけどねえ」
というと、その初老警備員は
「い、いや皆がマネすると大変だから……」
と言い残して、どこかへ消えていった。閉館5分前のガラガラの3人しかいない館内で「皆がマネする」もヘチマもない。寝言は寝て言え (前田日明 調)である。

 おれは腰ミノいっちょうで、鼻からアブクを吹きながら、ジェット・ローラースケートで滑って取材しているのではない。いかにも「フツーのおじさん」の姿で歩き回っているつもりなのだが。

 知性のキラメキというものが半獣人には眩しく感じるのか。どうなっておるのだ。


 
まー、こんな事をずっと書いていると、このHPの品格が下がるから、もうやめるけど、このようなことは枚挙にいとまがなく、書こうとすれば果てしなく書きつづけられる。けっこう苦労して取材してるのよ。好きでやってる事とはいえ、疲れるよ。



 えーと、話は戻る。
 しつこく警備員が睨んでいるので
(公共の施設内なんだぜ…)とりあえず、そばにあった軽食コーナー[E]に入り、身を隠す。


[E] 

 ここで考えた。こちらの目的は屋上か最上階へ行き、桜橋の瞰写真を撮る事である。なまじ受付で許可を取ろうとした場合、拒否される恐れがある。その場合、
「うるせーよタコ !!」
などと言い放ち、階上へ昇ろうとすれば、警備員の必死のタックルで抱き付かれるのは分かりきっている。腰にすがりつくガードマンをズルズルと引きずって昇っていく気力はない。

 カレーを食べながら、警備員の動静に注意をこらす。奴が知り合いと思われる人物と談笑をし始めた瞬間を逃さず、軽食・喫茶コーナーを飛び出した。
 立ち話をしている横を、気配を殺し、なにくわぬ顔で通りすぎ、奥にあったエレベーターに乗ってしまう。

 

 
エレベーターのボタンの最上階は5回であった。


 ( この項つづく )

( 23日のつづき)         

2/25  隅田公園  桜橋 2 

 公共施設特有の微妙な振動と微かな機械音をあげ、エレベーターは5Fに到着した。

 目の前に真っ暗な、巨大な空間があった。
[F]

 [F]

 
目が馴れてくると、そこは大きな競技場であり、自分のいる所は観客席の最上部である事が判った。
 桜橋の方角へと、暗闇の中を体育館の端をぐるりと回って歩く。
[G]
 [G]
上の写真と同じものの輝度を上げました。

 「非常口」の灯火は点いていたので、この辺りと見当をつけて、ドアを開けようとした。
 しかし、その扉にはカギが掛かっていた。これまでか、と諦めようとしたが、ドアノブの下に目を凝らすと、内鍵のつまみが目に入った。

 つまみを回すとカチャリと音をたてて錠がはずれた。

 もはや、ほとんど女子寮に忍び込む変質者状態である。

 
競技場観客席の扉の向こうは非常階段室であった。
 その非常階段室の窓側には大きなスモークガラスがはめ込まれていて、絶好のアングルで桜橋を眺める事が出来た。
矢印のあたりが非常階段室の撮影ポイント

 
背後から誰かが追いかけてこないうちに、たて続けに4枚ほどシャッターを切る。
 目的は果たした。もうここに用は無い。非常階段室のドアを、もとどおり内側から施錠し、小走りでエレベーターに乗る。注意深く2Fで降り、そこから階段を使って1Fに戻り(
巧妙) あとは野となれおしりぺんぺんベロベロバッキューンヒャーハッハで帰ってきた。



      執念の桜橋・俯瞰写真を見よ!!




 起請文 壱


 この項、まだつづく

( 25日のつづき )            

2/27  隅田公園  桜橋 3


付記

 台東リバーサイド スポーツセンターの前身は、台東体育館である。


 1960年の9月30日、二人の青年がこの会場でプロレスラーとしてデビューした。

 二人のうちの一人は身長が2メートルを越す大男で、もうひとりは背丈は190センチ程だが均整のとれた体躯をしていた。
 その若者達の名は、馬場正平と猪木寛至。言うまでも無く、のちのジャイアント馬場とアントニオ猪木である。

 記録によると、その日、馬場は中堅レスラーの田中米太郎と手合わせをし、5分15秒、股裂きで勝利。猪木は、少し前にデビューをはたしていた、同じく新人レスラーの大木金太郎を相手に、7分9秒、逆腕固めで敗れている。

 後年の「王道」と「闘魂」の象徴的な旅立ちであった。

1960年当時の台東体育館






この項、次回 「桜橋・異相空間(仮題)」につづく

( 2/27日のつづき )                             
3/3  隅田公園  桜橋 4 


 異相空間としての桜橋


 遊園地や科学博物館などに「ミステリー・ゾーン」とか「トリック・ハウス」とか称した、錯覚を応用して、人間の体を実際より大きく見せたり小さく見せたりする施設がある。
 実際に身長が伸びたり縮んだりするわけはないのだが、目と脳の錯視現象により、そう見えてしまう。

 桜橋の橋上には、この錯覚とは違うが、ある特殊な錯視現象が起こっている。


通行人すべてが「映画『男はつらいよ』のエキストラ」になってしまうのだ。





 
学校がえりの高校生、買い物帰りの主婦、散歩中の老人、得体の知れない中年男。すべての通行人が、寅さん映画で役名もない、「とらや」で草だんごを食う参拝客とか、さくらと博が家路につく途中にすれ違う近所のおばさん等のエキストラに見えてしまう。

 「男はつらいよ」に関しては言わずもがなであるが、しかしその桜橋橋上の「寅さん映画ほのぼのエキストラ現象」は不快なものではなかった。否、心地よささえ感じた。広い川面、川風、歩行者専用
(自転車は通行可)という条件があって、
東京人本来の穏やかさが自然に表出できる場所になっているのだろう。

 おれとしては「寅さん映画」は
渥美清というアナーキストが山田洋次というスターリニストっぽいひとに絡めとられてしまったような(←言い得て妙)感があり、おいちゃん役の森川信が亡くなってしまった頃から観なくなってしまった。

 まー、今となっては、アナもボルもスタもトロもないのである。ほとんどの人に何言ってんだか分からん事を書くのはもう止めるけど、とにかく桜橋の橋上の共同平和幻想は、悪くない。




 
最近の映画や、いろんな種類の芸術の「過激な」表現に食傷気味である。
「人間」を描こうとするとき、戦争・破壊・殺人・暴力などを通しての表現になってしまうというのは、かなり安易なのではないか
(そう考えると山田洋次ってのは、あなどれない)。ヒッチコックの例を出すまでもないが、残虐シ−ンは効果的に少なめに使った方が、心に残るのに。


「男はつらいよ・柴又地獄変」

日常生活に魂を押しつぶされそうになったさくらは、串に刺した草ダンゴを、客の両目に突き刺して、一歩下がって指をさし「目玉がじゅう〜!ひゃははははは」と笑う。

反抗期をむかえた満男は、葛飾ブラックエンペラー400台を率いて、とらやの店内をウィリーで暴走し、そのまま2階まで乗りこもうとしたが、真後ろにひっくり返り、
前頭葉がマックスターンで3万回

おいちゃんの裏の素顔は凶悪変質者だった。業務用冷蔵庫に閉じ込めたタコ社長の
冷凍死体を、頭からカンナでシャリシャリ削って、「氷タコ社長」に舌鼓を打ち、満足げ。

御前様は巨大なバトル・スーツに搭乗し、若い頃ならした蟷螂拳で、柴又を破壊しつくす。もともと
ヨイヨイのうえ、ボケているから、その暴れっぷリたるや物凄く、誰も止められない。

そしてついに寅次郎が、トランク型超水爆を爆発させ、
極東アジア一帯を死の砂漠に変える。


 
……な、シロートでも、たちどころにこんな事は書けてしまうんだから。少なくともプロの人は、よくよく考えてほしい。


だとかなんだとか言いながら、

 東京の空の下、今日も川は流れる。



 起請文 弐
      


この項、最終回 「『願い』とカブキくん(仮題)」へつづく








今週の東京 WEEKLY TOKYO
ハラキリ・ブラザースのトーキョー サイトシーイング ガイド

TOKYO SIGHTSEEING GUIDE  * USELESS ! *







inserted by FC2 system